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カナモリさんのいうとおり~ season3

カナモリさんのいうとおり~ season3

コミュニケーションという幻想

2009 年 5 月 13 日

Cc: Photograph by Andrew Beeston
【編集部からのコメント】
自分が所属する組織のメンバーと上手くやっていくにはどうしたらよいか?指導的立場にある人はどのようにメンバーを育てていったらよいか?組織人にとっては永遠のテーマ(悩み)ですよね。カナモリさんはどうお考えでしょうか?あらゆる角度から7回シリーズのコラムでお聞かせいただきます。今回はコミュニケーションを取り上げます。

あとちょっとで理解してもらえるかな?


Cc: World Economic Forum / flickr

「コミュニケーション」が変容している。過去にも人々のcommon senseの移ろいや、コミュニケーション不全について述べてきたが、もはやコミュニケーションという言葉そのものを考え直さねばならない時がきているのだ。

現代の家族関係を考えるときに「家族のコミュニケーションが減っている」は、問題点の定番として頻出するキーワードだ。教育問題では「学校と家庭、教師と生徒、生徒間のコミュニケーションのありよう」が取り上げられる。
ビジネスの世界では「上司と部下、社内全般のコミュニケーション」がなかなか取りづらいということが問題視される。
では、そもそもコミュニケーションとは何なのか。
広辞苑(第5版)をひもといてみる。「社会生活を営む人間の間に行われる知覚・感情・思考の伝達」とある。
とすれば、コミュニケーションの本質は「伝達」であると解釈できる。
では、「伝達」とは何か。「命令・連絡事項などを伝えること。つぎつぎに伝え届けること」とある。
この時点でおや?と思う。

様々なシーンで指摘されているコミュニケーションの問題点は、端的に言えば、「伝わらないこと」である。
コミュニケーションの本質である「伝達」をしても、伝えても伝えても伝わらない。それが今日のコミュニケーションの問題点なのである。
だとすれば、コミュニケーションの本質を「伝達すること」ととらえることが間違いなのではないだろうか。

「伝えようとすれば伝わる」と考えることは、島国の単一民族が育んできた極めて日本的な発想であるといえる。言葉を発せずして意思伝達をする。当たり前なこととして言葉を発生ない「言わずもがな」の発想だ。「阿吽の呼吸」という言葉などもこの思想が現れている。
しかし、もはやそれは「幻想」に過ぎないのだ。

「伝わるはずが伝わらない」ことから、昨今の様々な対人トラブルが起きている。
些細なことから傷害事件に発生するような数々の事案もその表出化である。
また、若者から始まりすっかり広まった「KY」、「空気読め(ない)」も翻って考えれば、相手に対し、自らの意志を推察せよと強制する、理解できない者を指弾するという行為を正当化することによって、伝わらないことを自らに起因させない思考停止の表れでもある。

コミュニケーションは、ラテン語の「共有」もしくは「共有物」に語源があるという説があることは過去にも紹介した。
ミドルマネージャーの研修で、「部下とのコミュニケーションが重要」との発言に、その意味を聞くと「意識共有」であると回答されることがある。正解だ。今日的なミス・コミュニケーションは、一方的な伝達だけして、全く意思疎通ができないという姿に現れる。伝達しただけではダメなのだ。
「共有すること」。
例えば、「部下とのコミュニケーション」といった場合は、話をしただけでは無駄なのだ。
「ミーティングを頻繁にする」との応えをよく聞く。それもいいだろう。しかし、ミーティングの結果、何らかのメモや議事録、または本人との明確な約束(commitment)をすることが重要なのだ。それは企業内だけでなく、学校でも家庭でも同じだ。

人と人とのコミュニケーションにおいて、何も四角四面でcommitmentを確定させることは「息が詰まる」という論もあろうし、現実的に「ではこういうことですね!」と会話の最後に確認をするのがふさわしくないシーンもあろう。
初対面や行きずりの人とはましてそうだろう。
しかし、「伝わる前提」のコミュニケーションは幻想に過ぎず、何らか、共有物を残すという意識を持つことは重要だろう。
日本古来の人と人の関わり方を否定するつもりはない。しかし、それが破綻しかけていることも事実なのだ。

カナモリさんのいうとおり~ season3




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