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ブランドと感情と記憶シリーズ

ブランドと感情と記憶シリーズ

第7回 世代を超えるメガブランド

2008 年 11 月 10 日

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 世代別マーケティングという言葉はよく耳にする。日本ではとくに定年後の団塊の世代へのマーケティングに注目が集まっている。なんてったって人数が多い。お金もある程度持っているし・・・。

 だが、世代ごとに異なるビジネス・チャンスを見つけようとするのではなく、異なる世代に共通点を発見しようとする研究もある。

 ハーバードビジネスレビュー(2007年7-8月号)に発表されたいたもので、要約すると・・・・

1. アメリカの歴史においては、1620年に清教徒がメイフラワー号で渡ってきてから今日まで、19の世代が存在した。
2. 各世代を家族、文化、価値、リスク、社会活動に対しての態度によって性格づけをしたところ、19の世代を4つのグループ(元型)に区分することができた。
3. 各元型に、その特徴によって「預言者」「放浪者」「英雄」「芸術家」という名前をつけた。ちなみに、日本でも知られている「ベビーブーマー世代(1943-60年生まれ)は「預言者」で、その次の「X世代(1961-81年生まれ)」は「放浪者」となっている。
4. 最初の「清教徒世代 (1588-1617年生まれ)」から今日まで、一回の例外を除いて、世代の元型の順番は同じだった。つまり、ヴィジョン、価値、宗教といった言葉に象徴される「預言者」世代のあとには自由、生存、名誉に象徴される「放浪者」世代が、そして、「放浪者」世代のあとには共同体、富、テクノロジーに象徴される「英雄」世代が続く・・・ということだ。

 先行する世代の特徴への反動の形で次の世代が生まれる。つまり、子供は親を見て育ち、その親に反抗する形で大人になる。人間は自分が属する世代によって性格づけられるのではなく、二代前の世代によって形作られた一代前の世代によって性格づけられる。だから、元型の順番が変わらないのは偶然ではない・・・と研究者は分析している。

 研究者たちは、たとえば以前の「放浪者」世代の20代のときの態度や行動を調べ、それが40代、60代とどう変わっていくかを見れば、いまは二十代の「放浪者」世代が40年後に、どういった言動をとるようになるかが予測できると考えている。

 将来の社会傾向を予測する興味深い方法だ。

 しかし、この研究内容を紹介した理由は将来予測のためではありません。

 時代は変わっても、人間(消費者)は「異なっている」というよりは「似通っている」・・・ということを証明する根拠のひとつとして紹介したのです。

 シリーズ第六回にも書いたように、消費者は水平的(グローバルな)観点からも、互いに類似している。そして、垂直的(歴史的)観点からも・・・。

 ブランド戦略において「選択と集中」が合言葉のようになっている。ブランドを取捨選択して、マーケティング投資を限られたブランドに集中する。こういったメガブランドは、消費者に多様性をみるのではなく、世代を超え国を超えても変わらない共通性をみることによってしか生まれない。

 人間である消費者が共通して持っている心の奥深くにある感情(emotion)にアピールすることなしに、メガブランドになることはできないのです。

(ブランドと感情と記憶シリーズ第8回につづく・・・・・)    

独断度100%のコメント
 日本の消費財メーカーや小売業は消費者に「バラエティにとんだ、価格の割には高品質な商品」を提供する競争を展開してきた。その結果として、高級ブランドを除いては、外資は「厳しい日本市場」でシェアを獲得できずあえなく撤退。つまり、日本企業は、些細な点で差別化された商品を販売し続けることによって、外資を日本国内から排除することに成功してきたわけです。

 だが、国内市場における熾烈な競争は日本の消費財メーカーや小売業に(欧米企業に比べて)格段と低い純利益率をもたらこととなり、脆弱な財務体質は海外への積極的投資を遅らせる原因となっている。(野村證券の報告書をみると、2004年度においても、日本の主要企業のROEは6~7%、かたや、米企業は16%を超え欧州企業は14~15%です)。

 日本市場がアメリカについて第二位の消費大国であったときは、それでよかった。でも、少子化の進むなか、国内需要だけに頼るわけにはいかないでしょう。

 日本のメーカーは、消費者に奥深い感情(emotion)ではなく、表出した感情(feeling)にあった商品を次から次へと販売してきた、以前にも書いたことですが、日本の消費者(人間)が新しモノ好きで気うつりしやすいとしたら、それは、日本のビジネスマン(人間)も同じなのです。

 たしかに文化的に異なる国民性というものがあることは認めます。でも、著名なグローバル・ブランドは変わらない共通点に訴えることによって成功しているのです。たとえば、シャネルやグッチといった高級ブランドは「憧れ」「嫉妬」「プライド」「恥」といった誰もがもっている感情に強烈にアピールします。

 コカコーラはアメリカ固有の文化を強調して成功した・・・ともいえますが、それは、結局は、世界の消費者に共通する「憧れ」という感情に訴えたわけです。そして、アメリカという国がもっているイメージが、「ハッピーで楽しい、楽天的な」感情を喚起するから、世界の消費者がそれに「憧れ」た・・・・わけです。コカコーラのブランド戦略総括者は日経MJの質問に答えて、「(コカコーラが創業120年を超えた今もブランド価値が衰えない最大の要因は)常にハピネスを感じさせる独自の価値観を保持してきたブランドだから・・・」と答えている。

参考文献: 1. Trond Riiber Knudsen, Confronting Proliferation…in Mobile Communication, The McKinsey Quarterly May 2007, 2.Neil Howe, et.al, The Next 20 Years: How Customer and Workforce Attitudes Will Evolve, Harvard Business Review July-August 2007 3.「 『幸福を感じさせる価値観保持」、日経MJ10/12/07

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